に考えているとすれば、あんまり悲惨なことだと思います。愛は創造の力です。苦痛をのりこえてそこによろこびをつくりだしてゆく能力をもつものです。今日の主婦のすべてが経験している家事の重荷、これから結婚しようとする若い婦人たちをおそれさすほど重い世帯の苦労は、まじめなすべての男子が自分たちの不幸の一つとして見ているものです。愛しあった男女というのは、その社会的な苦労を、自分たちの一生の努力で社会的に少くしてゆこうと心をあわせて進んでゆく、そこに決して、倦怠の生じないような愛の発展を生むでしょう。
幸福になるために結婚する、結婚するために恋愛する、これはなんていう理屈っぽいような理屈にあわないことでしょう。わたしたちは互いに生きてゆく心のうえで気があうからこそ愛すのです。愛する人間同士だからこそ、結婚もしたいのです。幸福に生きてゆきたいからこそ、その愛をまもり、発展させてゆく社会的な条件をふやそうとして努力するのです。わたしたちはこの人生において自分たちの幸福を、自分たちの生きる力こそがつくってゆくものであることを、腹から知らなければならないと思います。
[#地から1字上げ]〔一九四七年七月〕
底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社
1986(昭和61)年3月20日初版発行
初出:「アカハタ」
1947(昭和22)年7月7日
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2007年11月30日作成
青空文庫作成ファイル:
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