どし[#「こけおどし」に傍点]であった時代はとうにすぎ去っている。
 私は「資本論」をよみとおすことはできなかったけれども、他の部分では、作家として、女として、多くのことを学ぶことができた。文学が、これからますます人民の歴史を語るものになろうとしているとき、文学者は既成の「文学」の枠内で、新らしい骨格を養うことは、ほとんど絶対に不可能である。文章の上からだけいっても社会科学の用語が、小説のなかの生きた言葉になりつつある。生活の現実と実感がそこまでひろがって来ている。
 新版のマルクス=エンゲルス選集は、現代作家のだれだれのところに置かれるようになるだろうか。マルクス=エンゲルス全集、レーニン全集、スターリンの論文集と三つを眺めわたすと、その文体にまでも人民解放の歴史の足どり、社会主義の実現と発展のあゆみがてらし出されている。このことは私たちを感動させる事実である。
[#地付き]〔一九四九年十一月〕



底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年3月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
   1953(昭和28)年1月発行
初出:「マルクス=エンゲルス選集」月報第1号
   1949(昭和24)年11月30日発行
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月15日作成
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