とを研究しあい摂取しあうことこそ、最も真実な親睦であると思う。世界の民主的文学運動を貫いて、そこに共通の研究題目のあるのは当然である。資本家・企業家たちの組織するロータリー・クラブばかりが、世界文化をつなぐ輪であるべきはずはないのだから。
二
第二次世界大戦に際して、ソヴェト同盟の市民は、最近十数年間に高められた彼らの能力の全幅を世界に実証した。ソヴェト同盟に向けて計画された出血の諸企図は、ついにこの国の社会生活を貧血死に導くことができなかった。このことには人類史的な意味があり、歓喜があるのである。
ソヴェト同盟では、集団農場・国営農場があって、機械化された農業が行われている。この一事は、ロシアのムジークを社会主義的生産の農業労働者にしたばかりではなかった。トラクターをのりこなす若者たちはタンクに苦労する必要がなかった。ソヴェト式に自分たちの仕事を分担し組織する能力と習慣とをもった農村出身者たちは、東ドイツの村落へ行っても、その能力を発揮した。勤労者の技術学校があるということは、そこの共学の教室へ娘たちを愉快に通わせたのみでなかった。「春」という小説にかかれているような愛らしい誇ある婦人無電手をもたらした。そして、各雑誌・新聞などを中心とする|労・農通信員《ラブ・セル・コル》の広汎な発達は、大戦前後に、どっさりの前線報道員を生んだ。日本によく知られているシーモノフやゴルバートフの経歴は、いかにも新しい社会の作家らしい、経営内の文学サークルから彼らの文学的才能を開花させ、やがてその地方の作家同盟の組織に結ばれてきている。このように、ソヴェト同盟という社会主義社会では、一人一人の男女市民がその能力・才能と生活経験において独特な幅と質とを賦与されているという事実を、しいて無視し、さげすみ、誹謗して自身の壊滅の素因をつくったのがナチスであった。
こんどの大戦に際して、ソヴェト同盟で書かれたすべての前線文学・報道文学が、文学的に優秀であったろうと想像することはできない。きっと型も出来、紋切り型の感情描写もあり、敵が貼り紙をつけた固形物のように扱われた場合もあったろう。しかしながら、どうしても無視できない一つの現実がある。それは一九一七年から国内戦にかけての時代に存在したソヴェト作家の数・質と、一九四〇年代、この第二次大戦に際して世界的に活躍したソヴェト作家たちの数と質とに見られる必然的な飛躍である。これは世界文学史的な現象としてまじめに観察され、含味されなければならないことではなかろうか。
資本主義の社会で、芸術上の才能がその発展開花のためにふさわしい条件をもつということは、その可能の大部分をつねに境遇の偶然にゆだねられている。それだからこそ、映画女優を志願して、故郷のオクラホマからハリウッドへは行かずニューヨークへ出たミス・スチュアートが、メトロ映画会社に認められて契約を結んだ、というような小事実が、僥倖の一つとして日本の読者にまで写真入りで伝えられるのである。才能が「世に出る」機会が偶然にゆだねられているばかりでなく、人民のうちに潜在する能力としての才能の存在の可能そのものが、全然自然発生にまかせられている。既往の世界で、文化というものは上層社会でしか花咲かないものときめられていた。
一七年から国内戦時代に出現した新しいソヴェト作家たちの才能は、やはりもとの社会からひきついでの、偶然性と自然発生によるものであった。十月がツァーの重圧をとりのぞいた。デニキン、コルチャック、ウランゲルらによる国内戦と飢饉と大移動と、それにたいするボルシェヴィキの奮闘などは、ロシアの全人民に無限の経験とエピソードとをもたらした。全人口が「語るべき何事かを」生きたのであった。私たちに近親な作家として、たとえばフールマノフやファデーエフ等の作家たちは、彼の「赤色親衛隊」や「叛乱」の政治的・文学的意味を自覚して創作したであろうし、ファデーエフの「壊滅」は偶然の作品ではなかった。単にゲリラに参加した若者の手記ではなかった。けれども、同時代の作家でたとえばピリニャークが、馬鈴薯の袋をかついで、鉄道の沿線を、あっちにゆきこっちにゆくうちに、蓄積された印象に文筆の表現を導かれはじめたのは偶然であったにちがいない。イヴァーノフが「装甲列車」を書いたのにも、積極的な意味での環境の偶然性があったと思う。十月によって人民の文化の生れる社会的可能は拡大され、その基盤は拡大されたが、そのころは文学的才能の存在には「天賦」的事情が多かった。
「私は愛す」の作者アヴデンコが革命当時「保護者のない子供たち」ベス・プリゾールヌイの一人であったということには深甚な意味がある。ソヴェト同盟の社会がベス・プリゾールヌイのために「子供の家」を建設し、彼らの人間性
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