が再建設の悩みにもがいていた一九一八年に、この尨大な著述に着手した。新しい世界が人間により幸福をもたらすものとして造られて行かなければならない。その希望と、当時の世界的紛糾動乱の間に歴史の進化してゆく必然の水脈を見出してゆく手がかりとして、一般読書人のため、常識の整理のために執筆された。地球の生成からヴェルサイユ会議にまで及ぶその内容は、各専門部門にそれぞれ専門家の知識が動員されていて、委員として四十何名かの学者たちが参加している。
北川三郎氏の訳による大系二冊は、努力の仕事であると思うが、本が大きくて机の上にどっしりとおいて読まなければならない不便があり、高価でもある。それに、この訳にはところどころに訳者插入の研究が自由にさしはさまれていて(例えば文字の部分にある朝鮮文字の研究など)そのような研究に特別の見識をもたない読者は何か戸惑いを感じるところもなくはない。
このウエルズの文化史大系が、よりまとまりよく整えられて「世界文化史概観」(長谷部文雄訳上下二冊岩波新書)となって発行されている。この概観は初め一九二二年に現れ、次いで一九三四年に改訂版が出た。ウエルズは大系を五分の一ほど
前へ
次へ
全22ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング