がめぐりあってゆく運命と決して切りはなされることが出来ない。その国の歴史の動きというものはまた実に複雑な性質をもっていて、決して手品師の一本の棒の上でまわっている一枚の皿のようなものではなく、種々様々の国内の社会構成の力の消長によって推移する。その複雑ないくつもの社会的な力の摩擦融合の根源は、世界史の一部分として生きているその国が、自身の存在のために日夜行っている自転と、自転しつつ二六時中国際的諸関係と接触してその間の関係に変化を生じさせている、その二つの重なりあった歴史から生じて来るものである。
 そう思って考えてみると、今日の日本に生まれて生きている一人一人の若い女性たちの生命の意味というものも、何と深い広い内容をはらんでいることだろう。私たちが或る国の或る時代に、或る親たちから生まれたということは、それだけの範囲に限ってみれば全く偶然だけれども、生まれて、生きてゆくという自覚を持つようになってからは、その生を最大の可能まで花咲かせて、次の世代につたえるべき者としての歴史的な必然が生じて来るのは面白いところだと思う。よく世間には自分が希望して生まれたのではない、ということから、自分
前へ 次へ
全22ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング