のに、この戦争のあとでは、三百万人も婦人が多くなった。つまりそれだけ男が殺された。三百万人という婦人の中には、もとより年よりも子供も入っていよう。しかし、どんなに多い割合で良人を失った妻、父や兄弟を失った娘、息子らを失った母、そして、愛人を死なした若いひとたちがこめられていることだろう。
第二次ヨーロッパ大戦で、大きい深刻な犠牲を蒙ったのは、日本の婦人ばかりではなかったし戦争に敗北した国々の婦人たちばかりでもなかった。ドイツ・イタリー・日本。これらの国の女性は、ほんとうに有無をいわさず、愛情の懐から男たちを奪われ、野蛮と不条理で押しすすめた戦争のうちに愛する者たちを死なした。ファシズム・ナチズムの不条理と非人間らしさと戦って、それに勝利し、人間は最後には理性ある生きものであることを証明した民主主義国――アメリカ・イギリス・ソヴェト同盟・中国その他の国々でも、そこで行ったのは戦争であった。大規模で最も科学的な殺戮であった。正しさのためにも婦人は自分と愛する者たちの運命とを、歴史の仮借ない歯車の間においたのであった。
ヨーロッパの婦人たちが、民主平和のヨーロッパ再建のための連合国憲章に
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