分たちの生活のひどさの理由を発見し、そんなに急に自覚して来たというわけなのだろうか。
私たちは、自分たちの幸福のために今度の総選挙の結果を落ちついて吟味して見なければならないと考える。
第一、今度の総選挙は、日本の民主化のための重大な国民の行事であった。そのために、四月十日は休日になった。それほど大切な投票であるのに、全国で十四万人余の選挙人名簿記載洩れが生じた。新聞は、婦人参政権のために、殆ど一生を費して来た市川房枝女史が、当日わざわざ遠方の投票所へ行ってはじめて記載洩れで投票出来ないことを発見した気の毒な実例を報じた。市川房枝さんの心持はどんなであったろう。そういう人が、何万人とあるわけである。青森市では、記載もれの市民大会が開かれ、市長以下責任者が退陣しなければならなくなった。長野の或るところでは、役場の責任者が、責任感から行方不明となり、自殺したかもしれないと云われている。
このような大量な記載もれの生じた原因は、何だったのだろうか。役所では、隣組や町会に国民調査をまかした結果として、この次は各自申告をさせる、と云っている。しかし、ただ調査のやりかたの不十分というばかりで
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