反軍をあおる「犯罪」というものがあった。その嫌疑、その告発によって人々は生命さえおびやかされた。戦争放棄した日本に、いつ、戦争に反対する行為が、犯罪であるとされることになったのだろう。軍隊のないはずの日本に、いつ反軍[#「反軍」に傍点]の犯罪というものが成り立つようになったのだろう。反戦・反軍ということと「犯罪」という観念とを直結した用語の方法のうちにこそ、一九五一年度の、日本人民の人権擁護の要《かなめ》石がむき出しにされている。幾百万の人々がよむ新聞で日ごと夜ごとに、「赤」という正に「言葉の魔術」(大河内一男、十二月十三日、東京新聞)を行い、平和のための行為までを犯罪めいたものと暗示すること自体、権力は自身の修身をもっていないということを痛切に感じさせる。[#地付き]〔一九五一年二月〕
底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
1980(昭和55)年6月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
1952(昭和27)年1月発行
初出:「展望」
1951(昭和26)年2月号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月14日作成
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