にとけ込んでいる。
○電柱に愛刀週間[#「愛刀週間」に枠囲み]の立看板
◎右手の武者窓づくりのところで珍しく門扉をひらき 赤白のダンダラ幕をはり 何か試合の会かなにかやっている
黒紋付の男の立姿がちらりと見えた。

○花電車。三台。菊花の中に円いギラギラ光る銀色の玉が二つある
能の猩々。
子供の図
あとから普通の電車に赤白の幕をはったのがついてゆく。新議事堂落成祝のため。
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〔欄外に〕
○皇太子の生れてよろこびの花電車(1933の暮)春日町のところで会った。こちら自動車。ダーやられたとき あの感じを思い出した。
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     遭遇の場面

○新響のかえり。銀座。男二人女一人
 アラ! ああやっと見つけたという工合だわ
  アミノ と。
◎若松に入ってゆく、奥へゆく。右手に若い男二人こっち側、あっち側に緑郎
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鶴「いとこさんがいるよ」
見ると、しきりに何か喋っている
一人がしきりにこっちを見ている、
やがて気がつく。笑う。やがて緑 帽子をぬぐ。(何か自然で、おとなしく しつけよい感じ)
鶴「あのひともこの頃顔がなかなかしっかりして来たね」
「うん、いろいろ書いてやっているからね」
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 林町の通りへ入ったら後から Head light、そうかな。こっち止る、うしろも止る。すると緑が出て来てドアを外からあけてくれる。そういうものごしの中にある スラリとして細かいところ。

     秋の夕映

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午後五時頃、
 廊下へ出て見るとまるでつき当りの窓が赤い。
 空を見ると
冴えた水色とすこし澱《にご》った焔のような紅色とが横だんだらに空じゅうひろがっている。何だか他の季節の夕やけのように光の暖みを感じられず 只色どりの激しさのみ感じられ、変に不安を刺戟されるような印象である。
 その横まだらの空に 葉を半ば落したサイカチの梢がそびえている。
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○十一月の或小雨もよいの午後四時。
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暗いので部屋に灯がついている。
入った右手の安楽椅子のところに紀 ラクダ毛布を引かついで眠をぶっている。
※[#丸ス、1−12−71]紫矢がすり 赤い友禅のドテラ引かぶって櫛のハの通っていない髪 青い半ぐつした。

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