前と結合して、官製の農民文学懇話会結成の気運を齎した。その懇話会賞も制定され、その名の叢書も刊行され、それらの小説集の表紙には時の農林大臣有馬頼寧の写真が帯封の装飾として使われるという前例のない有様を呈した。
 近代及び現代の日本文学の中で、農民文学の占めて来た位置とその消長の跡とは、日本の社会と文化の成立の歴史と照しあわせてさまざまの感想を惹きおこす問題だと思う。日本が農業国であって、その独特な条件の上に明治の新文化が開花させられたのであるが、文学に於いては、長塚節の「土」を一つの典型とするのみで、土の文学を唱道する作家たちの活動や大正年代に吉江喬松・中村星湖・犬田卯等によってつくられた農民文学会の活動などが、特にめざましい文学上の収穫を齎して来ていないことは、注目すべきことである。農民文学のかような歴史の断続とそのみのりの或る困難さは、農民生活と土とに心を惹かれた作者たちに、日本の農村・農民の社会的具体性が十分明瞭に把握されず、ある人々は自然への愛好の表現の一面として、ある人は近代文化の都会性へのアンティテーゼとして一種のモラルの見地から農民文学に近づいていたためでもあったと思われ
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