でも一人残らずみんなデモに参加するんだ。
やがて遠くから音楽が聞えだした。ソラ! 出て見ろ!
町の角に立派な出来たての郵電省がある。幾条もの赤旗で飾られた正面玄関の石段に立って、群集と一緒に街の上手を見渡すと、来るゾ! 来るゾ!
赤旗につづく赤旗の波だ。
六列横隊で、自分達の工場音楽隊を先頭にして、行進曲と共にやって来る。愉快そうで、整然としていて、胸も躍る光景だ。
「五ヵ年計画ヲ四ヵ年デ!」
「ブルジョア反ソヴェト陰謀ヲブッ潰セ!」
次から次へ赤いプラカードが来る。あいまには、張物《はりもの》だ。ブルジョア、地主、坊主が、社会主義社会建設のために働くプロレタリアの鉄の鎚で、それぞれ頭をドッカン、ドッカンやつけられながら進んで来る。
ワーッ! と見物は喝采する。
先頭が赤い広場の入口で止った。後から後から、見える限り街は動かない赤旗だ。
「まだ赤い広場の閲兵式がすまないんだってさ。」
すると止ったデモの中に、いつかしら輪が出来て、元気な手拍子、口笛で昔からあるロシア踊りを若い連中がおどり出す。
向うの方でも負けてはいない。コーカサス地方の服装をした労働婦人が、長い白絹の布を手にもって、やさしい故郷の踊をおどりはじめる。
地面の上が喜びあふれるメーデーのデモで埋っているばかりではない。
空に、快い爆音がある。飛行機だ。数台の飛行機がメーデー祝祭の分列式を行っている――
モスクワのあらゆる街々から赤い広場へ向って行進して来たデモが、広場へ入る二つの門の外で赤旗の海となった時、広場の中《うち》では、威風堂々の閲兵式の殿《しんが》りとして、ソヴェト共産党青年団、中華民国共産党青年団救護隊が通過した。
社会主義ソヴェト、万歳※[#感嘆符二つ、1−8−75]
メー・デー万歳※[#感嘆符二つ、1−8−75]
ウラーアァ※[#感嘆符二つ、1−8−75]
轟く歓呼の声の下で、動き出したぞ!「インターナショナル」の一際高い奏楽といっしょに、先ず先頭の赤旗が広場へ向って静かに繰り出した。
続いて、あっちの門からも!
合流して、十数万のプロレタリアートが前進する足音と音楽とは、夕暮近くまで赤い広場に響き渡った。
デモは日が暮れるまでに終ったが、ソヴェトのメーデーはこれですんだんじゃあない。
夜はイルミネーションだ。
その壮観を見物しようとして押しか
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