証
事変以来、小学教員の不足と、その不足を至急に補うことから生じる質の低下とは心ある者を考えさせていたが、偶《たまたま》小学校教員の万引横領事件が発覚したということである。
これは勿論最も不幸な例外であろうが、どんなに優良な教師たちも、不良な者を犯罪に導いたと同じ今日の経済的な困難にはさらされている。この事実はなかなか複雑であり、重大でもあると思う。
入学試験の新考査法についてこの春様々の論調があったとき、衆口おのずから一致したのは、小学教員のおかれている経済的誘惑の点であった。
謹直な教師たちに屈辱感を与えたにちがいないその問題は、しかし、愈《いよいよ》物的条件の切迫した来春どんな形で再燃するだろうか。それ迄に、適切な策が立てられることを切望する。新しい文部大臣もそのことは考えられるのだろう。[#地付き]〔一九四〇年六月―七月〕
底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
初出:「東京朝日新聞」
1940(昭和15)年6月20、29日号、7月6、13、20日号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年5月26日作成
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