どの青鞜社の運動があった。封建的なしきたりに反対して女も人間である以上自分の才能を発揮し、感情の自主性をもってしかるべきものと主張した。田村俊子の文学は明治の中葉から大正にかけて日本の女がどういう方向で独立を求めたかという段階を示している。田村俊子の人間としての女の感情自由の主張の中には、きょうの目からみると非常にはきちがえた素朴な男女平等の考えかたがある。男のするようなわがままは同じ人間である女もしていいものだし、男が煙草を吸うなら、女だって吸ってあたりまえ、というように、男が中心をなして――つまり封建的な社会的風習を批判せず、ただ男がやっているのなら女もする、という考えかたの限界をもっていた。本質的な発展というものが見られていなかった。それにしても婦人が人間としての自分を主張しはじめ、次第に婦人の経済的独立の必要に理解をすすめてきたという点で明治末期から大正にかけての婦人解放運動は意義をもっている。
 昭和のはじめ第一次世界大戦後の各国の社会主義運動の擡頭につれ、日本にもプロレタリア文学運動がはじまった。その時代になってはじめて婦人の社会的地位の向上や婦人解放の課題は、その国の大衆
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