を根本的に人民の生活機構から追放して、健全な精神と能力の人民が自分ら人民のために社会を運営してゆく方法しかない。これは動かせない事実である。それにもかかわらず、自分の頸をあのようにも絞めた力に対して、まだ自身弁解の労をとる風があるのは不思議である。人民は、被虐病者《マゾヒスト》ではない筈である。
真面目な若い一人の特攻隊長が、自身の責任と人民の不幸とに刺戟されて、社会的解毒剤たる共産党に入党したという記事があった。若き率直さをほむべきかな。「選挙対策」に腐心して、一歩一歩人民の真の必要から離れつつある政党の首領たちは、その一歩ごとに「生ける屍」となりつつある。
[#地付き]〔一九四六年一月〕
底本:「宮本百合子全集 第十五巻」新日本出版社
1980(昭和55)年5月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
1952(昭和27)年1月発行
初出:「毎日新聞」
1946(昭和21)年1月17、18、20〜23日号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りに
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