の形を解説されたのであるが、主婦たちは、どんな感想をもって、これを聴いたであろうか。税のことは男の世界のこととして聴きすてたのであろうか。財閥は決して退治されていない。生計の担当者である彼女たちの一票は少くともそれに反対する人民の意思表示となるべきであると思う。
安達ヶ原
群馬の或るところに恐ろしい人肉事件が起った。また再び詳しく話し返すに堪えない残忍な話である。今日、食糧事情はそこまで逼迫《ひっぱく》しているという人もあろうが、難破して漂流している孤舟の中に生じた事件と仮定してさえも、私ども正常の人間性はその残酷さを許し得ないのである。ましてやこの事件は、単純きわまる残忍さが徹底している点で言語道断な特殊な一例である。
さてここに注目されていることは、不幸なめぐりあわせに陥った被害者が、その家庭で継娘という立場にあったことである。あの記事をよんで、日本中には少くない同じ立場の若い娘たちが、人知れずどんな恐怖にうたれたであろう。昔から可哀そうな少女のお話の女主人公は継娘ときまっていて、ヨーロッパにも「シンデレラ」の物語がある。女の感情生活は社会のひろい風に吹かれ
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