リアや農民の子はどうです。親があったって、親は搾られ、ろくな飯さえ食えずにいる。
 まして、孤児院とでもなったらそこにいる子どもは、子供達のかせぎで孤児院経営者の一家を食わしている有様です。
 孤児院ですがと、押し売りに来る子供の声と恰好は、ブルジョア家族制度の悪のかたまりです。
 日本人は、親子の情にあついのが世界の誇りだとブルジョアは云いますが、それは金のある親と子の間でだけ通用する。いくら可哀想と思い血の涙をこぼしても、金を出さなければ医者のよべないブルジョア社会で、一文なしならどうしましょう。医者にかけられずに子を死なせた親を情なしと云ったら口はさけます。
 ブルジョア社会では、親が金の余裕をもってその子が幸福になるように考えてやらない限り、誰も責任は負ってくれない。親の貧乏なのはその子の不仕合わせ。両親を失ったのは不運ときめて、冷ややかなものです。
 ソヴェトの世の中、働くものの世界がくれば、どの子だって生まれたからにはソヴェトの子、働くものの社会の子、です。
 仕合わせになるよう、いい働きてとなるよう、国家(働くものの社会的連帯)の力で育てあげる。その証拠には、この「五月一日の子供の家」にしろ、暮している子供達を御覧なさい。実に快活で、朗らかで、生粋のピオニェールたちです。
 わたし達は子供たちが出して何か書いてくれという手帳に次のように書きました。
「みなさん!
 わたし達はみなさんに会って本当にうれしいと思います。ソヴェト同盟の新しい社会の値うちがみなさんの生活のうちに生きているのを見るのは、何とうれしいことでしょう! いい働きてになって下さい、一日も早く、世界の子供たちが、ソヴェト同盟の子供たちのように生活できるようにしましょう。
 働くものの国ソヴェト同盟万歳!」[#地付き]〔一九三二年一月〕



底本:「宮本百合子全集 第九巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年9月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本「宮本百合子全集 第六巻」河出書房
   1952(昭和27)年12月発行
初出:「女人芸術」
   1932(昭和7)年1月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2002年10月28日作成
青空文庫作成ファイル:
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