合理的な生活の新様式があるのだが、このユージュ君のプランは、面白い。ソヴェトの少年が、かの集団的生活、家庭に於ける生活の実際経験から、社会主義的生活の理想のためにどんな都会を要求したか。
この「赤い星」形の樹木でかこまれた工業的都会は農村とどう連絡しているかを、市民の生産的社会労働の核をなす種々な工場が、その性質にしたがって或るものは川岸に、或るものは住宅近く配置されている点を注意してほしい。ユージュ君は託児所について特別関心をはらっている。大人の為の労働者クラブは住宅区域の内に、ピオニェールのクラブ、学校、子供の遊び場その他は東側の二隅に、すっかり分離されている。
大人の生活と子供の生活との間のある間隔の欲望、これは現在ソヴェトの意識ある若い時代共通の望みだ。ソヴェトである程度以上年齢の差ある大人と子供は大人子供というより、根本的に世界観の違った旧人間と新人間の差である場合が多い。彼らは社会主義国家の働きてとして健康な集団生活の中で必要な訓練を安らかにうけることを望んでいる。
ああ、それからユージュ君にはもう一つ望みがある。それは広い学校の建物が、紫外光線ガラスではられていることである。
「紫外光線ガラスは」彼は云ってる。「太陽の人間の体にとって有利な光線を透す。だから、きっと子供たちは衰弱しなくなるだろう」と。[#地付き]〔一九三〇年十月〕
底本:「宮本百合子全集 第九巻」新日本出版社
1980(昭和55)年9月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本「宮本百合子全集 第六巻」河出書房
1952(昭和27)年12月発行
初出:「改造」
1930(昭和5)年10月号
※「――」で始まる会話部分は、底本では、折り返し以降も1字下げになっています。
※「大抵昼間働いてからだし、」は、底本では「大抵昼間働い、てからだし、」とあります。
入力:柴田卓治
校正:米田進
2002年10月28日作成
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