国主義とファシズムの犠牲者に階級の兄弟プロレタリアートからの挨拶を!
 また、
 ――世界革命、万歳※[#感嘆符二つ、1−8−75]
 レーニン廟は修繕中である。今は「レーニン留守」の感じを与える。ひろい板がこいの上は生産に従う労働者と農民の鮮やかなパノラマ式画でおおわれ、赤いイルミネーションが、こっち側の歩道を歩く群集からも読める。
 レーニニズムノ旗高ク
 五ヵ年計画ヲ四年デ!
 たなびく赤旗が強烈な夜の逆電光をうけとるといかに感動的な効果をもたらすか。昔の首斬台は一九三〇年のメーデーの夜そういう忘られぬ赤旗の美しさと労働者の力づよい群像で飾られている。ラジオ拡声機の大ラッパは広場じゅうへ活溌な行進曲を弾き出し、全景は赤い! 赤い!
 黒い壁となって河岸まで押し出した群集は、カーメンヌイ・モストのたもとで一時ホッと息をいれた。河風は涼しい。遠くで夜空を燃している光の家、労働宮のイルミネーションが夜の河面へとけ込んでいる。クレムリンの長い外壁は灯のけない暗闇だから、遠いそこだけが何とも云えず輝かしい。
 五色のイルミネーションは対岸のモスクワ市発電所にもあって、三百六十四日はむっつり暗いモスクワ河の水を色とりどりにチラつかせている。
 モスクワの群集はイルミネーションに対しては素朴である。群集の中から満足した笑いごえがし、或る者はそのまんま橋の欄干にもたれた。或るものは更に暗いクレムリンの外壁に沿って労働宮の方へ。
 ソヴキノが照明燈《プロジェクトール》をもやして労働宮とそこへ向う群集を撮影している。橋の下では二艘ボートが若い女をのせ、イルミネーションのとけ込んでいる辺だけ小さく漕いでいる。
 最近の二年間はすべてを変えた。ソヴェトの生産振興の為の五ヵ年計画は一一〇パーセントの全生産拡張プランとともに生活全線を社会主義再建設に向って勇敢にねじ向けてしまった。――
 が、そのことは又別に話すとして、地図にかえろう。我々はモスクワ市の環状ブルワールを見つけたい。
 一本はこれである。クレムリンを中心に一寸がたついたコムパスで大きく描いた円みたいな環状線。これは外の並木通りで、絞りをずっと縮めてゆくともう一本やっぱりクレムリンを遠巻きにして円く――そう! これが内の並木通りである。

 並木通新聞《ブリヴァールナヤ・ガゼータ》という言葉がある。
 先年、モスクワ駐在の不
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