しい発育を遂げるのです。私共は、それ故、異性の間に生れる特殊な雰囲気は、人生に大切な一種の創造的元素とし、真面目に純粋にそれを扱い、常にその内容と環境とをよりよく仕ようという努力をすてないのです。
 都会には多くの女子の学校があり、生徒と教師の数も夥しいものです。けれども、相方がある程度までは異性になれていること、周囲に比較すべき文化、人材の多いこと。並に、当人達も、田舎よりは情操の訓練を受ける機会が多いため、概して軽浮な中にも敏感で、よくいえば趣味よく、悪くいえば狡く打算をもって感情を整理して行くかと思われます。
 田舎では女学校などというと、知識程度の低い周囲と比較して一種の別天地です。情感の鈍い、精神の死んだ年長者達と顔をつき合わせておれば、年が若いというだけでも充分溌溂とした女性達は、確に生活が淋しく物足りないに違いない。その感傷が、当人達も自覚しない自然の力にも手伝われて、友達や教師にひどくセンチメンタルな手紙を書かせるようにもなるのでしょう。
 そういう場合、異性の教師が、或る程度まで心理的な洞察力のある、人としてよい訓練を経て来た者なら互方の進んでゆく道と限度は凡そ定って
前へ 次へ
全5ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング