憲兵・特高制度が廃止されたということは、直接治安維持法の対象とされていた民主的な思想の人々を解放したばかりではなかった。生きのこった日本の全人民が、はじめて幾重もの口かせ、手かせからときはなされたことを意味した。ニッポン・ニュースがこの期間に製作した「君たちは話すことができる」一巻は、日本の民主化の過程に忘れることのできない記念品となった。人民の一人一人を吊りあげることも出来ると威嚇した人権蹂躪制度とその施設が無力なものとさせられてゆく姿をうつしたこのニュース映画は、素朴な描写のうちに溢れる濤のような自由への渇望を語っていた。
そのような新しい潮におされて、まだ日本独特の民主主義の実体は不明確にしかつかまれていなかったけれども、ともかく人民が人民の幸福のために求め、たたかい建設してゆくことの当然を次第に理解しはじめてあけた一九四六年の春から一九四七年の二月ごろまでのひと区切りが、日本民主化の第二段をなしている。この時期の性格はきわめて微妙であった。日本の人民的民主化の意欲がどのように高まったかということが、大規模の大衆行動で、次から次へと示されはじめた。民主的な人民の文化運動が急速に
前へ
次へ
全12ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング