を出来るだけ早くとりのぞき、まず近代のブルジョア民主主義を完成しなければならないのだから中国、日本などの歴史では、ヨーロッパ諸国で十八世紀、十九世紀の間にブルジョア民主主義を完成した市民社会、ブルジョアジーの階級としての確立がなかった。
 日本では明治維新以来次第に銀行資本と産業資本の結合した独占資本の形は発達したが、生産の格式はおくれた半封建の中小企業を基礎とし、軽工業を基礎とし、植民地賃銀といわれる低賃銀で男女の勤労者を働かして来た。土地の関係も徳川時代と変りない地主小作の関係がつづき、年貢を米、麦等現物でおさめ、耕作方法も機械化されていない。今日までの政治で、一般人民がどんなに無権利であったかを思い出せば、日本に近代市民社会の無かったことは明瞭である。ほんの一握りの大地主、財閥が封建的に支配して来たが、その権力は日本の経済、政治を民主化させる実力をもたず、己の利益のために侵略戦争をひき起し、日本を破壊した。
 日本を不幸にした特権者の封建支配よりすべての日本国民を解放し、ブルジョア民主主義を完成する能力をもつものは、今日日本の人民の多数を占める男女勤労者であり、勤労階級である。
 ヨーロッパ諸国では十七、八世紀頃よりブルジョアジーが階級として民主化の遂行者として現れ、市民社会をつくり、その任務をつくした。日本では、きのうまで半封建で、急に民主化がされなければならないから、ヨーロッパ歴史の二世紀ほどが飛んで、すぐ、日本の近代民主化の遂行者が勤労階級しかない現実があらわれたのである。おくれた国の歴史は或る時期に飛躍する。それが現実である。
 順序をふんで民主化が行われた国であれば勤労階級が主体となって進む民主主義は社会主義的民主主義である筈である。が中国、日本は、そうでない。ブルジョア独裁の民主主義でもなく、さりとてプロレタリア独裁の民主主義でもあり得ない中国、日本の今日より明日へのデモクラシーを、新民主主義と呼ぶわけである。
 封建のしきたりと無権利とに苦しんでいた勤労大衆、中産階級、知識人、婦人などの生活は実にこの勤労階級を主軸として進展する日本の新民主主義の完成がなければ、幸福は決して約束されない。婦人の解放などは実現しない。
 婦人民主クラブは、日本の歴史の特長によって新民主主義を完成するのが日本人の真面目な唯一の目的であることを理解しなければならないと思
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