烈であり執拗であるのが普通です。実家の親戚、知人、職業上の連絡など何一つないような生活をしていた御両親でしょうか。
満州引あげの際、良人と生きわかれになったということは死別よりも苦しく、あわれに切ないことです。翌年の夏まで満州にいて、多分死んだろうと云われ、そうなのだろうか、と思っていたまま三年すぎた、というのも聞くだけで苦しいことです。死んだのだろうと思いながらそのまますぎた月日のなかで新しい恋愛が生じ、そうなったら、こんどは生死不明のその人を生きたものとして、離婚を求めるという、そのこころもちの推移も、やっぱり苦しく思えます。前の良人のひととは恋愛による結婚ではなかったのでしょう。そして、二人が生活していた間、どんな情熱もないただの偶然の夫婦だったのでしょうか。
離婚なさい。そして、新しい結婚をなさい。そして、新しい結婚によって、人を愛するとはどういうことであるかということをしっかりと理解し、自分の感情に責任のもてる女性に成長なさい。
そういうちゃんとした生活の幾年かのちに、あなたは、過去の自分がどんなに境遇に対して受けみであり、自主的でなく、よわいものの薄情さをもっていたかということについて、発見なさるでしょう。
[#地から1字上げ]〔一九四九年一月〕
底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社
1986(昭和61)年3月20日初版発行
初出:「女――その世界とその問題」(「レポート」別冊)
1949(昭和24)年1月1日発行
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2007年11月30日作成
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