の支持者であるとしたら、困難は実に大きい。若いサラリーマンの給料は妻を扶養するのもむずかしく思われるほどだのに、ましてその家族の負担などは考えることもできまい。男にも経済的に助けなければならない家族がある場合がむしろ多いであろう。下級勤人ほど、この家庭の経済的羈絆はその肩に重からざるを得ないのである。
それに、一つの職場中でも、伝統的な男尊女卑はのこって作用している。職業婦人の感情には、集団としてそのしきたり[#「しきたり」に傍点]に反撥する感情の潜んでいることは自然であり、男の同僚たちも、男尊の一般的傾向にしばられ女に親切な男として仲間からある笑いをもって見られることを厭う。馘首の心配に到る前に、これらの重複した原因から、男と女とは、一つテーブルのあちらとこちらとでも、まともに対手を眺めようとしなく成っている。人間の心理は微妙であるから、自然な状態におかれればおのずから親密さや選択の生じる若い男女が、はじめからある禁圧を意識して日々対していることから、牽引が変形して一種不自然な反撥となって感情の中には映って来ることさえあるのである。
さいわい、互に働いている男女が愛し合うとして共
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