グ・ドレスが華やかな裾を拡げて示されていました。また日本の平面的な顔ではとても冠りこなすことの出来ない、風変りな大帽子などの新型も示されていました。それらが、わたくしたちに異国的な臭いを嗅がすことは嗅がすけれど、それだからといって、わたしたちの生活が一歩でも美しさに近寄れるでしょうか。
ところがある雑誌には一つの注目すべき小さい数行がありました。それはアメリカの若い大学生や勤労婦人たちは特にそういう人々の生活にふさわしい、よく洗濯のきく丈夫な、色のさめないように特別な染料で染めた服地を持っているということが書かれていました。このことはたった二行か三行の記事であったけれども、わたしたち女の眼を見はらせることだったと思います。同じ一枚のワンピースがほんとうに若い女性の生活をいたわり働く婦人の身だしなみをいたわって、そのように特別に染められた布地で作られているなら、どんなに若い人たちの心の楽しみがふえるでしょう。いろいろな型の切りかえというようなことがいわれるけれども、型を切りかえるまえに布地が破けて、色がさめることをどうしましょう。わたしたちはぜいたくな二着分の布がこの社会で作られるより
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