生活の日々の姿ではなかった。もっと苦痛に息づきながら、その歌を歌わんとしている熱心な心の経歴をこそかきたい。人類の歴史の善意につながれながら、全く独自な相貌をもっている日本のそのユニークな歌を描きたいと思う。そのために、朝子はどうしなければならないだろうか。最も誠意ある行動として何をしなければならないのだろう。
せき上げる思いにつき動かされて、朝子は寝台から起きあがった。朝子のすべきことは、帰ることだ。そうではないだろうか。自分の悲しみの在るところへ、或は自分の挫折があるところへ、そこへ真直ぐかえって、正直にそれらを経てゆくことではないだろうか。その悲しみと挫折とをこそ、ここの生活を愛すその心が愛すのではないだろうか。もし自分に成長というものがあれば、この価値を知る、それが成長の意味ではなかろうか。朝子は謙遜な、また体の震えるような生活への熱意を感じ、よろこびと悲しみの綯《な》い合わされた涙をおとした。今帰ること、それは朝子にとっては、生活への出発とも思えるのであった。ここから出発してゆく。そのかげには愛する弟のいのちをも裏づけているここの三年よ、もし、自分をここに止めておこうとする
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