在るのではないだろうか。
自分のとかく定着しようとするどちらかというと生物的な限界を、本当にテーマをつかんだ自分の作品の客観性でうち破り、一歩一歩進んでゆくような制作ぶりこそ、芸術らしいと思う。芸術は、小さい自分というホウセン花の実のようなものを歴史と社会とのよりつよい指さきでさわって、はぜさせて、善意と探求と成長の意欲を人間生活のなかにゆたかに撒くことでしかなかろうと思う。自分を突破して客観的真実に迫ってゆく歓喜が余り深くこまやかであるから芸術の制作に対する熱情と献身とは、人間の世界で愛の範疇にいれて語られるのだろうと思う。[#地付き]〔一九四七年七月〕
底本:「宮本百合子全集 第十三巻」新日本出版社
1979(昭和54)年11月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十一巻」河出書房
1952(昭和27)年5月発行
初出:「新日本文学」第8号
1947(昭和22)年7月
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年4月23日作成
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