サした日本の映画の発展を熱望している。放送討論会でも日本映画の将来については大衆の熱心で支持的な発言があった。おくれた日本の映画製作の諸条件は、これからやっと正常な軌道にのせられるはずであるのに、東宝を先頭とする経営者たちは日本文化の課題としての映画製作事業の本質を全然理解しない。軍需会社で儲けたとおりの利率で儲けようとこころみている。この欲望は、非民主的な娯楽の愚民政策と一致している。
 最近の二年間に多くの自立劇団、美術、音楽、詩、小説、科学のグループをもちはじめた日本の労働組合員は、彼らの休日の大きい楽しみである映画が、輸入ものかさもなければ愚劣な日本ものしかなくなるということについて、重大な関心を示している。映画製作が簡単な職場の自立製作によっては不可能であるという本質は、勤労階級の映画愛好と正比例して東宝問題の重要性を理解させた。文化における資本主義の害悪を具体的に感じたすべてのものは、日本の人民の自主的な文化を守り、それを発展させることが、経済と政治の面における人権確立にともなう実際的な一つの要素であることを自覚した。産別、総同盟をふくむ労働組合と民主的文化団体の総連合によ
前へ 次へ
全166ページ中162ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング