走{がより強力な独占資本の庇護のもとに自身の存在を維持しようとしているとき、その利益を代表する政権が、真に民主的であり得ないことは明瞭である。すべての悪質な大衆課税を通過させた両院が承認する五人の放送委員が、真に公共の利益のためにたたかい、言論の自由のために奮闘する人物であろうということは、こんにちの常識において最もあり得ない仮定の一つである。
 放送委員会がそのように期待できない五人の少数委員によって構成され、その委員会が直接総理庁の外局であるとき、自由なラジオの健全な発展は望む方がむしろ不自然ではなかろうか。日本のラジオはこの少数委員会のもつ非常に大きな権限と電波庁との統制をうけることになる。一般の人々が政府案をラジオの官僚統制案とみていることはさけがたい必然である。政府案第十二条は、この五人の委員が「任命後最高裁判所長の面前に於て正規の宣誓書に署名してからでなければその職務を行ってはならない」としている。正規の宣誓書の内容は一般に知らされていない。五人の委員はなにを誓わせられるのだろう。これまで日本の民衆はさまざまの奇妙独善的な人権蹂躙的な誓いをたてさせられてきた。こんにち民衆が
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