タ倍能成が就任した。新しい館長は四七年七月に「近代日本洋画展覧会」をひらいてやや活溌な仕事に着手した。この展覧会は日本の洋画の基礎となった明治初期の油絵画家の作品から近代日本洋画の古典となった作家たちの作品をあつめたものであった。
 この他しばしば催されるようになったヨーロッパ名画の複製展、中国の版画展、中国の元・宋時代の名作展などは専門家ばかりでなく、美術を愛する一般の人々に喜びをもって迎えられている。
 日本画の中心的組織は「日本美術院」である。日本画壇は画商と連帯をもった強固なスター・システムでかためられている。日本画家の生活の全面が封建的であり、きびしい閥がある。日本画家は多くの場合すでに注文主のある絵を仕上げて展覧会に出す。有名な画家の作品はたちまち金持の所有として一般の眼からかくされてしまう。有名な日本画家の作品はヤミ屋の親方によっても財産の一種として買い込まれている。日本画の領域にははっきりした民主化運動が起らないほど封建的習慣がしみついている。
 日本画の技法にはさまざまの芸術上の問題が含まれているけれども、それはあまり画家たちの良心を苦しめる問題ではなくなりかけている
前へ 次へ
全166ページ中143ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング