cの活動はこの困難を救うためにも要求されている。
 組合や職場の演劇に対して経営者は、その費用を出すことで経営者側の好む芝居を上演する劇団にしようとしている。この計画はあまり成功しない。何故なら、観客がとりもなおさず働く人々であるから、自然働く人々の生活的な判断力でその芝居を批判するから。

        3 音楽

 戦争中正常な意味での音楽は日本の人民の生活から奪われた。演奏会曲目にはドイツ音楽だけが許された。レコードでさえアメリカやイギリスの音楽は禁じられ、子供の唱歌は兵士の歌う軍歌と同じものにされた。演奏会は常に何かの形で、軍関係に義捐《ぎえん》の催しでなければならなかった。オーケストラ部員は白と黒との服装を捨ててカーキ色の国民服というものを着た。すべての音楽家は広い戦線のあちこちに慰安隊として動員された。三浦環のような歌手さえ満州へ行かなければならなかった。小学校の音楽教育は急にドレミファからハニホヘトに変えられた。そして軍事的な目的で音感教育がやかましくいわれた。しかもこの子供達が歌う歌は軍歌しかなかった。
 このようなおそろしい状態からやっと日本で音楽がよみがえろうとし
前へ 次へ
全166ページ中133ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング