Aすべて委員会と名のつくものは政府の統轄のもとにおかれなければならないことになる。政府にたいして独立の発言権をもてばこそ、たとえば労働委員会にしても勤労大衆の福祉のためになにかのプラスを加えることが可能である場合が多い。それが委員会であるから行政施行法によって政府の掣肘をうけなければならないとすれば、委員会本来の性格は失われる。教育委員会法にしろその規定に従えば、現在決して民主的ではない官庁の支店にすぎないことになる。日本の一般人は、権力者たちが考え出したこの狡猾な委員会の性格のすりかえにたいして注目している。彼らは対日理事会その他のアドヴァイスによって日本民主化のための各種委員会を組織しなければならなかった。やむをえず組織した委員会は表面的な日本の民主化の看板としてかかげておきながら、時をへだてて行政施行法のなかにあらゆる委員会を統制下におく方法を発明している。このような民主化のすりかえは、最近にいたってますます巧妙悪質になってきている。この場合にも彼らの利用するのは種々の弾圧力である。日本の人民は自分たちの政治的無経験がどんなに悪用されているかということについて目を覚ましはじめている。このようにして日本の民主化とその文化建設の段階は、より複雑なより自覚的な新しい第四の時期に入った。
底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
1980(昭和55)年6月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十一巻」河出書房
1952(昭和27)年5月発行
初出:「思想と科学」臨時増刊号
1949(昭和24)年1月発行
※「世界生計費指数」「東京物価指数」の表中の項目は、タブで区切りました。
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月14日作成
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