親があったとして、その娘さんが廃嫡されれば戸主ではなくなるのだから、戸主としてもし与えられる何かの権利があれば、社会的な性質のそれを先ず失うこと、我から失格して、妻の幸福を守らなければならないということにもなる。
 そのような幾多の不便をのりこえて現在雄々しく日本の女戸主としての負担を負うて行っている女性たちが、私たち女の戸主はどうなるだろうと、問いかけたい心持を抱くのはまことに自然なことと思える。
 彼女たちは一つの世帯の主人でもあるだろうし、そのような立場の国民としてそれぞれの税も納めているであろう。女の戸主への免税はきかない。
 私たちの朝夕には、社会的な勤労の場面に働いている女性たちが仕事と家庭との間の板ばさみで困惑している有様に満ちているのだけれど、一つの家庭の主であるということからさえ、女には独特の困難があるというのは、いかにも日本の社会の歴史の特色を語っていると思う。[#地付き]〔一九四一年二月〕



底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
   1979(昭和54)年7月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻」河出書房
   1952(昭和27)年8月発行
初出:「現地報告」
   1941(昭和16)年2月号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年5月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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