の限度に達しているという感じです、まさに溢れんとしているようです、矛盾が。ハムレット的雰囲気というのは、実に実に面白い、こんな写真はじめてです。右の端に元帥服を着た人は、英語で交わされる二人の話に、笑顔で向いています、アゼルバイジャンの髭はなくなって格幅よくどっしりと若々しく手を何と上品にくみ合わせて、首を二人に向けているでしょう。気品というものは、かかるもの也という風よ。チャーチルは荒海で古びた指導のあざらしのように巨大ですが、あまりのリアリズムのために美を失っています。ハムレット風の顫動は、思いやれる様々の点での興味をひくとは云え、そこに感じられるのはよろこびではないと思います。アンの「北方への旅」にあるああいう揺れ(彼女のスケールでは、気の利いたようでもあり機智的であるようにもあらわれる、あの聰明さとそうでないものとの間の微妙なニュアンス)気品人間的尊貴の美しさというものは大した大したものね。わたしははいバルザックさんと見せてやりたいのよ。人類の、こういういくつかの典型を、あなたはどこまで描けますか、と。わたしは、バルザックが困惑するだろうと思って大いに笑えるのよ。彼も大きい心情
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