ば帰るのが困るし。今市電十時で終りですから。
国男たちがゆっくり眠って休むように、と開成山へ誘います。たしかにねまきになって髪もほどいて眠って見たいわ、けれども、この一ヵ月ゴタゴタつづきで、やっと寿が帰ったと思うと国で、わたしはおちおちした自分の時間がありませんでした。一人でいたいの、実に一人でいたいのよ。本をよみ、手紙もかき、そちらでは覚えていたことをいつか忘れるような毎日でない毎日が送りたいのです。一週間、仮にのんびり眠ったとしても、食べて眠るだけに、安らかさはあるのでないから、わたしは矢張り参りません。子供たちは見たいけれども、キャーキャーワーワーで、気が安らかでないと思います。本やとの話が気にかかって居りますからね。わたし一人ならここで何とかして昼間休むことも出来るのだし。「わたしども」の暮しぶりをチャンとやれるのが、一番いいし結果的には其が休養となります、あっちこっするのは少くとも私には却って不安をまします。
やっと人が来たのに、自分がガタクリ動いては何の甲斐もありませんものね。国は十日かおそくとも十五日いて帰る由です。あのひとも、そうやっていますが、徴用のことがあるから
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