昨日で終りました。マアこんな風で、ブランカも恙《つつが》[#「恙」は底本では「※[#「恙/虫」、527−5]」](妙ねすこし)なかったことをおよろこび下さい。机の上に、内科読本など揃えてそのままとんでは哀れを止めてしまいます。
二十五日のお手紙、ありがとう。一昨日頂きました。あなたのお手にも紅糸綴りが出来ましたって? まあ。ねえ。ことしはあなたが瘠せていらっしゃるばかりでなく三十年来の寒気の由です。そのために、どこもここも凍りついて水道のパイプはこわれるし、直す資材はないしこちらなんか大不自由して居ります。十年ぶりに起きておすごしになるにしては愛嬌のなさすぎる寒中です。残念なことです。こう凍りついてキンキンかたいと、春ある冬の詩趣だけでお暖り下さい、と思うには、ブランカもすこし人間くさくて空々しいほどの詩情は披露いたしかねます。そのくせ、つくろい物はのろのろおっかけというのではどうも器量が上らないこと夥しい次第であると思います。手袋もそんなでは何とかいたしましょうね。変に指をひっぱってはめたようなずらしたような工合にしていらっしゃると目につきましたが、おそらくあれはつまり指先は持って
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