注22]直さん――徳永直。
[自注23]柳瀬さん――柳瀬正夢。
[自注24]戸塚の母――佐多稲子。
[#ここで字下げ終わり]
七月三十日 〔網走刑務所の顕治宛 福島県郡山市開成山より(封書)〕
七月二十八日 晴 爽やかな日、縁側に、荷づくりする物を干しています。昨夜は九時すぎから、二時間おき位にボーで起きました。南の山の方に光りも見ました。
きょうは爽やかな日となりました、暑いけれどもここらしくからりとした風が吹わたって。
上段の卓の一方に私がこれをかいて居り、左手に太郎が頭をかいたり唸ったりし乍ら、宿題をやって居ります。空の模様のため学校は休みで、宿題が出ていたのを、急にやるので、大さわぎなのよ。うちには、机一つ勉強出来るようにはなっていないのだから、太郎のフラフラも無理なしですが。この子は数学の方が国語よりすきだって。本を並べて見ると、成程と思います、わたしだって健全な頭をもつ子供だったらやはり数学の方が面白いわ。
この頃の子は五年で、立体なんかもやるのね。もし欠点をいうと、原理を知らなくて、キカイ的に計算法だけ(形式として)うのみにしているから、本式の数学勉強をはじ
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