月十五日ごろだったかしら。それから十九日迄)こちらに来たときは、心痛一杯で気をもんでいて、ここの生活の空気にもなじめず気持が切のうございました。早く片づけなくては私の今後一二年間の生活に影響するような用が国のズルズルのためたまっていたので。そういうとき書いた手紙が、丁度そちらへの初便りとなってしまったのねえ。様々に印象ぶかい旅をなすって、やれとおちついて今のわたしのように風のたたずまいにも感じが動かされるようなとき、あんな詰らないくしゃくしゃ手紙御目にかけてわるかったことね。御免下さい。あの時は、ああやって書かなくては気が持たなかったのよ。
 国は十九日から七月三日迄滞京。いろいろの重要な用事を順調に果すことが出来ました。いい工合に、その間は東京がすこしひまで壕へ入ることもなかったので、本当に助りました。これでわたしの生活の事務的面が整理され、もうそちらへ行けるようになった次第です。一年か一年半は、気をもまないで休養と勉強とで暮せそうです。往復は不可能ですしここに暮すことはあながちよくもないから、そちらのどこかで暮します、その町か、すこし奥へ入ったところかどこか。面倒でないところで。保
前へ 次へ
全251ページ中148ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング