田舎暮しでは雑誌がなくなったのだからこういうものも大切です。
隆ちゃんへのたより島田へのたよりのことも定期用件のうちに加えてちゃんといたしましょう。時間がないとは決して云えなくなりましたから。
この手紙は、同じ食堂ですが、いい工夫してかきはじめました。長原孝太郎という古い洋画家の家から低く脚を切った椅子を二つもらいました。まるでまるで低いのよ。かけいいの。そこでふと思いついて、廊下で塵に埋れている太郎が一年生になったときの学童机をもち出して、ガラスに近くおきました。今のここのメムバーでは腰かけて食事すると、公衆食堂のようだと思う人々ですから。適当な大さのテーブルなく、一方で坐っているのに聳えたつのはこまるし居心地わるく坐っていたのよ、いかにも主婦机となりました。赤いつばきのおくれ咲き一輪をさして。しかし主婦机というものは、どんなに小さくてよいかということにびっくりいたします。半ペラならこれで十分だし手紙だけならこれで十分よ。しかし小さい卓は卓面のひろがりが人に与える落付きというものをもって居りませんね。一つきりの引出しに手紙道具、右横の物入れになっているところにはノリやメモや本や名
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