ンクリートと結びつけて考えると、凍えるようですから。やっぱり虫が少いのね、痒いことが少い夏はどんなに快いでしょう。東京から来ると、ここでさえ、こんなに蠅が少いところではなかった筈だのに、と思い、まア何と蚊がいないのだろうと、清潔さにびっくりいたします。猶更でしょうそちらは。
この頃すこし冷えるのね、きょうも紺がすりの下に肌襦袢を着て居ります。
隆治さんとお母さんへのたよりは、これのあとすぐ書き御近況もおしらせいたしますから御安心下さい。
速達はおくれたところへこちらへ廻送の分となったのでしょう。このお手紙は三日にかかれ、六日目について居ります。市内では半月以上かかりましたものね。この間多賀ちゃんから手紙が来てわたしが去年から多賀ちゃんに手紙書かない、と云って歎いて来て居りました、そうだったのかしら、と信じ難く、生活の遑しさを省みました。本当にひどかったのねえ。多賀ちゃんにもゆっくり書き、お母様もこれから御心配いただかないように書きましょう。殆ど毎日書いていたそちらへの手紙が、本年になっては、この間うちあんなにまばらになってしまったのですものね。それで十分がたがたぶりがわかるというものです。ああいう風なガタガタ暮しは、もうおしまいよ、うれしいと思います。今のうち潮が高くなって来ないうち、大急ぎで、手につらまって飛石づたいにそちらへ移ってしまえば、もうそれで落付きです。この頃のことだから、どこへ行ったにしろ其々今らしいことはつきものでしょうが、其にしてもね。内地[#「内地」に傍点]はもう2/3ばかりわたしの背後の景色となって居ります。こういう場合になったとき、経済上の理由でわたしが動けなかったりしたら、余り情けないと思って、一豊の妻を心がけていて、ようございました。つつましく暮せば一年や一年半何とかやれましょうし、そのうちには又いくらかの収入の途もつきましょう。筑摩の方からは、予約の1/3しかうけとって居ず、この間会って、あとをダラダラ借りせず、今にいくらでも入用のとき、そのときは又、片はじから返せるわけでもあるから、そのとき予約の倍も三倍も出して貰うから、と話しておきました。
六月一日に御注文の衣類。忘れたのでなく手おくれになってしまったのでした、御免なさい。合いから夏ものみんな田舎でとりよせるのが、間に合わなかった次第です。シャツは壕の中で時機を失った到着を
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