お働きにならないよう、川へ洗濯に行らっしゃるのもすこし気分が変だったら必ずおやめになるよう、よくよくおっしゃってあげて下さい。いつもいつも書くのですが、お元気だから黙殺よ。しかし多賀子の手紙などには同じことを心配して居りますし。
 私が久しぶりで手紙をかけてよかったとこちらへもよろこんで下さいました。自動車のことはそのとおりです。乗用とトラックとが新しく入るというようなことが友子さんの手紙にありました。Yという人物やその間の事情も代表的なものですね、いつか島田で私一人店にいたら途方もない横|柄《ヘイ》な奴がヌット入って来て頭も下げず、少額国債のことを話し(自分が買うと)私は何奴かと思ったらそれがYの由。裏の路の話は三四年前からでした。ではもう出来たのね、やっぱり高く出来たのね、人間の生活の常態というものに対して親切な心くばりの欠けた強引プランというものは、いつの時代にもどんな場合にでも人々の心に舌ざわりの荒い滓《かす》をのこすものです。或種の人々の感情には横車を押しとおす快感めいたものもあるでしょう。小人物はそういうものだから。有無を云わせぬというところに何かの感じを味っていたりして。
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