目だ、いる人は病気で臥たというのだもの、臥てもいられないわけでした。
咲は神経衰弱をなおすためにこの頃自転車で一日に二時間近くのりまわし、それでやっと眠り食べられる方へ向いて来て居ります。泰子は純《ジュン》生理上の弱さですが、大人への影響のしかたは複雑で、心理的となり、遂にモラリスティックな問題にまで入って来ます。この点がもっともおそろしいところです。泰子に体をくわれるのはよいとして、心をくわれ、一家の健全性をくわれるのは許せない気がします。
こんなにむき出しに自然の暴威を目撃することは珍しい経験の一つというべきでしょう。母の本能性は尊くもあるが余り盲目でありすぎます。一家の健全性についての責任があるというようなところまでゆけば。あなたに迄とんだとばちりで御免下さい。もうやめましょうね。いろいろな心理とモラルのクリシス(母、女として、妻として)を感受するのが収穫であるというだけでおさまるには、私は少し人間ぽいのよ。そんな三文文士根性に止まれない健全な人間としての憤りがあるわけです。しかし咲として泰子にからむ自分のいろいろの動揺をたたかってゆくことはやはり一つの大きい訓練です。こうい
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