晩は幸せに暖かくて、火無しの部屋も今日のようには寒くなかったから、みんなものんびり寛いで、太郎が張り切って四角い口を開いて軍艦遊びの新型を説明するのをききました。
思いがけない友達が、ちゃんと私の誕生日を覚えていて、私の世話で『シャロット・ブロンテ伝』が出版されたお礼だと云って、わざわざ贈物を持って午後に来てくれたりしました。こんなに良い誕生日を祝ってもらうには、並大抵なことではなくて、矢っ張り、一ぺん死んだだけのことはあると、みんなが笑いました。そうしたらね、太郎はよほど感ずる処があったとみえて、次の日みんなの居るとき、真面目くさって「アッコオバチャン、今年の夏も病気するといいね、みんなが水瓜を持って来てくれるから。」と云いました。苦笑おくあたわず、私曰く、「病気はもう御免だね、病気なしでも少し水瓜があるようにしようよ」と。手近かな推論には恐縮しました。全く記録的な祝われぶりでした。
オリザビトンは、本当に利くようです。それに、今家では病人揃いで、国男さんも変に工合が悪がって居るし、アアチャンは軽い腎盂炎だし、スエ子は例の通りだし、こぞりてメタボリンを服むから、せめて私が、別の物
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