? 足袋底を丈夫にする作業もどうもうまくゆかず割合ましなのがあってネルが内側についていないからいけないけれど、それでお間に合せいただきます。来年は一工夫してうちで暖かいのを縫いましょうね。男足袋を第一今売り切れだし。玄米はガスが制限で大弱りです、たくのにずっと時間がかかるから。隆治さんのことはまったくそうで、私はだから尚更あの人の素面で経た辛苦を尊敬いたします。写真送ります。

 二月六日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕

 二月五日
 今日は旧の元日だそうです。小春日和でしたね。三日のお手紙ありがとう。タチバナの本はまだ注文してありません。そちらでやって下さいますか、ありがとう。
 開成山から佐藤と云う当年四十二歳のとっさま[#「とっさま」に傍点]が来て、これは祖母の時代に一郎爺さんと云うのがいて、別名目玉の爺やと申しました。その娘がおけさ、と云って、たいした働き者で、身上をこしらえましたが、或時亭主の留蔵が浮気をして、猛烈な喧嘩が始ったとき、亭主は建てたばかりの家をぼっこしちゃうと云ってぶちこわし始めました。そしたらおけさも、ふんだら俺も手伝うと云って障子を持出
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