ンスの分裂と堕落がよくわかり、ロベスピエールという偏執的潔癖家が、大なる新しい力を余り観念的に純潔に守ろうとしてギロチンにばかりたよって、逆に急速にリアクションを助成し、それに乗じてフーシェがロベスピエールの首をおっことしてしまうところ、なかなか大した歴史の景観です。ロベスピエールたちは議論議論で、しかも大した観念論でやっていたのね。フーシェはそういう弱点にうまくつけ入った男です。裏切ったが、自分のために、ツワイクの云い方ですればバクチの情熱のために冷血なので、自分が安穏にはした金で飼われるのが目的ではなく、同じ無節操の標本であるナポレオン時代の外務大臣タレイランが享楽を窮局の目的としたのとは又違う姿がよく描かれています。
 そして、私に又多くのことを考えさせるのは、著者ツワイクのこういう人物の見かたです。なかなかよく客観的に見ているのですが、しかしツワイクはフーシェのような人物の存在し得た時代の本質については、決して十分把握して居りません。ロベスピエールのような男、卓抜な男が、何故当時にあっていつも大言壮語美辞を並べ、武器としてはギロチンしかなかったか、それで通用ししかも其に倦きた当
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