あわただしくてついお話しのこすこともあるし。
 この夏、東京にいたのは、何とよかったでしょう。十三日の電報を、もしどこかの田舎で見て、それからどんな汽車でも一番早いのをつかまえてかえって来るというようだったらその間の心配で、田舎に行っていた二十日や一ヵ月はけし飛んでしまったでしょう。ほんとにあのときの心持思い出すと、田舎なんかで、一人であのショックを堪えて何時間かひどい汽車でもまれたりしたら、きっと今頃又病人だったに違いないと思います。よかったわね、それでさえも又眼が妙になったのよ、そこで土曜に医者へ行きました。薬を注して瞳孔を開いて眼底をすっかり調べてくれました。やはり前同様で、視神経は萎縮してはいないのだそうです、ビタミンBしか薬もない由。せいぜい美味いものをたべて、休養しなさいとのことで美味いものというときはお医者も呵々大笑よ。私も大笑いいたします。ユーモアも時代的です。あなたもBが一番大事だそうですが、ずっと上っていらっしゃるでしょうか、メタボリン上って下さい。あれを一日十錠―十五錠のむと五ミリとかで、注射するのと匹敵するそうです。又島田へお金を送って願いましょう。もう補充もあ
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