すが。きょう忘れてしまって。又帳面がいりますね。

 八月十七日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(箱根芦ノ湖の写真絵はがき)〕

 八月十七日
 栗林さんが明日又行くそうですから、改めてよく話しておきました。あの人として提案がありましたが其は御意見を伺いました上でのことです。
 気分のよくないとき、遑しく用件をお話しにならなければならなくて本当に本当にお気の毒です。体をねじるような動しかたは禁物よ、平らに平らにとお気をつけ下さい。そして、ゆっくり、そっと、ね、どうぞ。

 八月十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(土田麦僊筆「罰」の絵はがき)〕

 八月十八日。きょうは入沢さんの本をよんだり看護婦勉強いたしました。チフスの後に視神経炎や眼精疲労が起ることがある由、そうでしょう。だから、こまかい字をお読ませしないようにいたしましょうね。熱はいかがでしょう、二週間目に入りいくらか上るのではないでしょうか。

 八月二十四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

 八月二十四日
 大して高い気温でもないのに、(午前九時八十四度)むして、汗がひどくて凌ぎにくいことね。
 背
前へ 次へ
全440ページ中245ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング