か。去年のトマトの今夕の味を思いおこします。そこまではわかっていたのよ。あったかいトマトでした。
七月三十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
これが、タイプライター用紙です、かなりのものでしょう? 今そこいらに書簡箋というものはありません。
さて、きのうは一寸気がもめました。八月一日は日曜日だし、二日はさしつかえるし、三日は疲れていてあやしいし、というわけできのう汗をふきふき出かけましたら、お目にかかれず残念でした。けれども、事情がわかり御自分の病気でおありにならないなら、これも世間のおつき合いで致しかたがあるまいと思いました。本当にあなたはお丈夫なのでしょう?
そう云えばこの前私が出かけてから十日経ちましたが、お手紙頂かなかったことね。あなたの御都合とだけ考えて居りましたが、そうでもなかったかもしれないのね。
それにつけても、これはどうでしょう、着くかしら。それともやはり二週間は禁足でしょうか。随分御退屈つづきに暮させたから、これからは少し、と思っていたところへ、早速又二週間ほどちっ居でお気の毒さまです。やはり今年の流行病のひどさですね。どうぞ、どうぞお
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