白い本で、少年向というのが、丁度たのしみの程度です。イリーン『自然と人間』(中央、ともだち文庫)は訳が「あります」文章で、イリーンの持ち味をそこなって居ります。二つとも手に入りました。お送りいたしましょうか。特に『地図の話』の方。

 七月二十六日 (消印)〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(ウラジロモミの写真絵はがき)〕

『地図の話』よんでいたら尺度の標準をきめたのはフランスであり、大革命の直後であり、子午線の長さの決定のために測量班がダンケルクへ行ったそうです。ダンケルクというところはこういう不滅の記念をももった土地なのですね。フランスではすべての価値の標準が変ったので、学者《ガクシャ》は兵火にでも何でも変ることない尺度の標準を求めて活動しはじめたのだそうです。つまりは人工的にメートルをきめたのが落着だそうです。

 七月二十六日 (消印)〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(富田溪仙筆「迅瀬の鵜」、「梢の鶯」の絵はがき)〕

『地図の話』なんかよんでもつくづくと考えます、わたしは、太郎や健之助が、少くとも科学的な技術家になってほしい、と。学者としてというほどをのぞまないでも。文学
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