筆 パリ・ノートルダムの写真絵はがき)〕
これがせむし男のノートルダムです。右のはずれにみえる広告塔のようなものはパリーの共同便所でブドー酒くさいおしっこが流れ出ていることがよくありました。春のはじめらしい景色ですね。
『世界外交史』の第二巻買ってお送りします。岩波から野尻重雄という人の『農民離村の実証的研究』という本が出ていて買いましたが、統計が多くて今の私にはこなしてもらえないので、もしよかったらお送りします。面白そうな本です。なかなか細かく真面目にあつかっているようです。
今日も寒い日ね、私は綿入羽織をきて針差しのように丸くなっています。
一月二十九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕
一月二十六日
今日は、今年始めての時雨た天気ですね。私は天降って食堂の炬燵《こたつ》に仲間入りしています。アアチャンの処へお客様で、スエコと二人切りになったから、好機逸すべからずと云うわけよ。
今日は火なしだと河鹿簑之助だから、スエコは此処を離れては、字なんか書けないそうです。(意地悪でしょ)
昨日はギリギリの時間でお目にかかれ、色々の様子を伺えて、何となく安
前へ
次へ
全440ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング