ちでそういうお義理のおつき合いには役に立たないのだから。星出というひと、島田のお母さんの御上か下かでしょう? そこの息子が目黒かどこかの無電学校に来ていて、よく来たいと云って来るのですが、些か敬遠でいるから、そんなのでもこの際一緒にして親戚話を東京に移動させたらいいかもしれませんね。東京ではいいことだけを期待して来るお客様は実につらいものです、お察し下さい。こういうときは沁々一人がいやよ。せっせと働いて、あなたどうぞと、お願い致したいと思います、そしたらどんなに気が楽でしょう。細君というものは、変なところで気が弱くて可笑しいものでしょう? これが即ち細君よ。
星出さんの息子は一《ハジメ》というのです。中條を何度直してやっても中将とかいて来るのよ。そういう学校が東京にだけあるのではないでしょうし、やっぱり東京へ出しておくというところに親の情愛があるのかもしれないが、あのゴタゴタの渋谷辺うろついて、と思います。いい身分なのね、でもきっと下宿で、さぞおなかのすくことでしょう。うちは丼に盛りきりの御飯で、来月からはそれも不足で私はペンをやめなければいけないかも知れません。この頃はバターもなか
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